日常の歓喜

日々のエモを残したい。

ルルーシュに捧ぐ

ルルーシュ、初めて私に倒錯を教えた男である。

 出会ったのは中学2年生の登山合宿だった。中学生女子はあほなのでとても元気なので山を駆け上り降りしても夜更かしできた。あのころ、ちょうどコードギアスの1期の放送が終わり、BS11で再放送するよ、という時期だった。夜、部屋に集まって誰かがベッドの上に広げたトランプにはコードギアスのイラストがついていて、悪い友達が「○○は絶対こういうの好きじゃろ?」と拘束衣のC.C.を見せてきたのだ。当時人並以上に耳年増だったが、それは文字媒体だけに偏っており刺激的な映像には慣れていなかった。そんなうぶな目には悪いものだと一瞬で―女の子のすごいおっぱい、悪役じみたぎらぎらした目、フェティッシュな服装―確信できる絵面。でもシュッとしていて目が離せなかった。ホテルのほの暗い照明と、慣れない夜更しも相まって、目の裏が焼き付くように興奮を初めておぼえた。

 山から帰り、再放送をこっそり録画する。親がいる場では当然後ろめたくて見れなかったので深夜に、早朝に、留守の合間を縫って、慎重かつ大胆にコードギアスを見る生活が始まった。毎週度肝を抜かれた。アニメってこんなかっこいい動きするんだ!こんなことテレビでやっていいんだ!こんな展開ありなんだ!そこから一週間がコードギアスを中心に回るようになる。

 

ルルーシュ、初めてロマンチックを私に教えた男である。

 さて、コードギアスを中心に回り始めた世界で私がどれくらい熱狂したかというと関連した単語を見ると、カッと頬が熱くなるのを感じたくらいである。彼を想起する単語を見ただけできゃあっとなるのである。風邪薬の「ルル」も延長「コード」もドキドキする。「C.C」レモンも。サルである。

 文字によって彼を想起しドキドキするようになったので中高の授業中、やたらと電子辞書にLelouchと打ち込み続けていた。指先でたたたとキーをたたくたびにLelouchが発生するのである。すごくない?美しく輝く文字列Lelouch。恋をすると好きな人の名前を何度も書いてみたり、読んでみたりするあれである。ロマンチック!ちなみにその他電子辞書に打ち込む文字列としてお気に入りだったのは「きみのくびをしめるゆめをみた」である。これは文字数が使っていた電子辞書の文字入力欄にぴったり収まって小気味よかったからだ。

 

ルルーシュ、初めて言語化の気持ちよさを教えた男である。

 もちろんこの熱狂は私とコードギアスのみによって生み出されたものではない。頭の中で沸き立つ興奮を文字や口から出す言葉で共有できる友人がいたからである。拘束衣のC.C.が私好みだと看破した悪友を筆頭に周囲の友人はみんなコードギアスに夢中だった。1話話が進むたびに、長電話をし、それだけで足りない部分はルーズリーフの両面に書きたくった。お互いに良かったことを伝え合うためには、言葉を尽くし語らねばならない。義務ではない。興奮に突き出されるところてんのように言葉を出せば出すほど、楽しくいい気持になってくるのである。まさにグルーヴ感。私の頭の中のポコポコと沸騰した湯をぐらぐら溢れ出すマグマに変えたのは、言語である。

好きなものやことについて頭の中でぼおっと思うより、言葉にすることでさらに深い楽しみが得られることを教えてくれたのがルルーシュだった。当時の私の口癖は「ルルーシュと結婚する」である。ルルーシュという大好きな響きに結婚とかいうロマンチックフレーズを組み合わせた最高の文章の主語が私だって!?すごくない?とか思っていた。言ううちに1%くらいはマジで結婚できそうな気がしてきたのはご愛敬である。

 

ルルーシュ、私はあなたのおかげで

 こうして頭の煮えたぎった生活を送っていたが、コードギアスは終わってしまう。アニメだから当然だ。あまりの喪失感に私は喪に服すと宣言し、次にはじまったガンダムは見なかった。受験ということもあったが、同じ「アニメ」にルルーシュ以上の好意を抱いてしまったらいけないと思ったからだ。私は「結婚」しているのだから!!!

ただその悲愴なる決意も、ヘタリアの前にはかなく破れることになり、そうなればもうあとはやぶれかぶれである。こうしてコードギアスをきっかけにして様々な二次元作品に手を伸ばすようになり現在に至っている。今の私のとある大部分はルルーシュによってできているのである。

 

ルルーシュ、そんな彼が10年の時を経て復活する。

 なんということだろう。初めてそのニュースを知ったときまず思ったのが、「仕事辞めなきゃ」である。彼の復活に全てのリソースを注がねばならないからだ。

ただ辞めてしまうとお金を貢げる可能性が減る。(現在薄給なので貢げたとしても微々たる金額だが。)私の労働が彼を動かす動力になる最高の機会にそれはあまりにもったいないのでは、辞職は思いとどまった。どんな復活になるのだろう。そもそも文字通り「復活」ととらえていいのか?何かの暗喩か、全話を見て初めてその意味が分かるのか、と想像はつきない。

 

ルルーシュ、生まれてきてくれてありがとう。その生き様も、死に様も最高だったのに、さらに生き返り様も見せてくれるなんて感謝の念にたえません。 

 とりあえず、1月の総集編映画楽しみにしています。大画面で、大音量でルルーシュの得意げな悪役声が聞こえると思うと....。とにかく生きようと思います。